70歳までの定年延長は企業にとってどうなのか。

人生100年時代ということで、雇用を70歳まで引き上げることがあちらこちらで議論されています。政府の未来投資会議においても、昨年の11月26日には「65歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けた検討を来夏に向けて継続する。」として「70歳までの就業機会の確保を円滑に進める」ために法制度を整備していくとしています。

 

人生100年となると、65歳で定年となると引退期間は35年ということで、普通のサラリーマン人生と同じぐらいの期間、引退して暮らすこととなります。個人的には70歳でも足りなくて、何らかの形で85歳ぐらいまで働くような社会を実現するべきなのではないかと考えています。

 

企業側が70歳まで定年を延長することが検討することは、従業員としては今後の生活を考える意味で、喜ばしいことでしょう。しかし、企業側がもろ手を挙げてこれに賛成するかというと、そこはちょっと疑問が残ります。企業側に立って考えてみましょう。ちょっと極端ですが、、、

 

まず、今まで引退していた人が引退しなくなると、新たな人を雇用する余地が少なくなります。日本の企業の多くは、今、売上、特に国内の売上を伸ばす状況にはありません。調べてみるとわかりますが、国内売り上げは横ばいという企業は思ったよりも多いものです。売り上げが横ばいならば、従業員数を増やすことも難しくなります。少なくとも引退した人数分を新規雇用にあてるシンプルなモデルで考えると、継続雇用により、新規雇用の枠はかなり小さくなります。

 

次に給与ですが、もし、総人件費を上げないのであれば、60歳になった瞬間、初任給レベルに落とす必要があります。イメージとしてはところてんのように先に出てきたものを後ろにくっつける形です。そうでないと、総人件費が上がってしまい、企業の業績に大きく悪影響を及ぼします。

 

そして、やるべき仕事です。基本的には、今までの仕事の延長が求められてはいないと考えるべきです。今の仕事は次の世代に任せるべきで、新しい仕事を自ら作るか、入ってこない新入社員の代わりを担う必要が出てきます。スキル的には新人に比べて格段に高いとは思いますが、役割としては管理職ではないでしょう。少なくとも日本の企業は管理職が多すぎです。また、アドバイザーという役割もそんなに多く必要ありません。

 

先日のエクステンション講座のときに、アンケートで「最後に起業の話になったのが違和感があった」というコメントを何名かの方からいただきました。でも、すべての人の定年を延長するということは企業側からみるとかなり無理を強いられます。ならどうするか。こういうことをメンバーの皆様と具体的に議論していければと思っています。