我が家を選ぶ基準は「住む価値」のほかに「市場価値」「賃貸価値」という尺度があることを前回のコラムでお話ししました。我が家の価値をこのように考えることの意味は、人生100年時代において「お金の問題」に対処しながら、豊かで快適な住生活を、いかにして送れるかを考えるため、ということに尽きます。つまりはローンを借りて、持ち家をやっと持てたとしても、一生をかけてローンを完済したら、「お金のゆとりのない」老後が待っていた・・などとならない方策を考えるということです。
定年退職後に「年金収入」だけでは、生活費が足りない問題を、どう解決するか?この問題を解決するには、収入を増やすしかないわけですが、まずは働き続けて「勤労収入」を得ることですが、加えて、自分の預貯金や不動産などから得る「資産収入」をどのように獲得し、増やすかを考えることはとても重要なことなのです。
「資産収入」といえば、たくさんの預貯金や不動産を持つ富裕層のことで自分には関係ないと思う人も多いと思います。しかし、持ち家という資産を活用することだ、といえば持ち家率が6割を超える現在、多くの人が「自分事」として考えられるのではないでしょうか?
持ち家を活用した資産収入を考えるには、持ち家に住み続ける場合と、住み替える場合に分ける必要があります。
まず持ち家に住み続ける場合を考えてみましょう。一般的に、持ち家に住み続けながら資産収入を得る方法は三つあります。第一がリバースモーゲージ、第二がリースバック、第三が、シェアリングです。
第一のリバースモーゲージとは、自宅を担保に金融機関から融資を受ける方法です。この方法は、自宅に余裕担保価値がある場合に限られますが、この方式で借りたお金は、通常、元金は返済せず、利息分だけを返済することで余裕資金を生み出すことが可能になります。元金は返済しないで残債として残りますが、元金の返済は自分の死後に担保として拠出した自宅を売却することで返済されます。東京スター銀行や三井住友信託銀行などが有名ですが、近年、取扱う金融機関は増えているようです。
第二のリースバックとは、自宅を売却し、売却先の企業と賃貸契約を結んで住み続ける方法です。この方法は、リバースモーゲージほどは一般化していませんが、センチュリー21やハウス・リースバックといった不動産事業会社がサービスを提供しています。また、自営業を営んで法人を所有している場合であれば、自宅を管理法人に売却して、賃貸契約を結ぶ方法もあります。いずれにしても、このリースバック方式は、自宅をいったんは売却するために、手元に大きな資金が確保できる利点がある反面、譲渡税などの売買に伴う諸経費が発生してしまうことに留意しておく必要があります。
そして、第三のシェアリングは、自宅の一部を他者に貸し出す方法です。昔から賃貸併用住宅というものがありましたが、これもシェア方式の一つの方法と言えますが、このほかに民泊方式や使っていない部屋の賃貸も未使用スペースの有効活用により収入を得る方法といえます。最近は、自宅で使わなくなった空き駐車場を時間貸しできる駐車場シェアリングのサービスを提供する企業も出現していますが、これなどは場所によっては毎月数万円の収入を得ることが可能で、最近注目を集めています。
今回のコラムでは、持ち家に住み続けながら資産収入を得る方法について解説してきましたが、意外にこうしたことを知らずに、自宅を「宝の持ち腐れ」にしてしまっている人は多いような気がします。
次回は、持ち家からの住み替えを前提とした資産収入を得る方法について紹介したいと思います。
鴨志田 晃