将来の公的年金の財政見通し(財政検証)を見てみる

8月末に、厚生労働省から、将来の公的年金の財政見通し(財政検証)が発表されました。この発表を受けて、さて年金をどうとらえればいいのか、ちょっと考えていたのですが、この資料は整理されているようで、なかなか一般人には解釈が難しいように思えます。私自身、どう見ればいいのか、正直、よくわからなくて、仕事の合間に見ながら考えたりしました。

今回のメルマガでは、この概要をお伝えしながら、年金の将来性について考えていきたいと思います。まずはこれをご覧ください。

 https://www.mhlw.go.jp/content/000540199.pdf

 https://www.mhlw.go.jp/content/000540198.pdf

これは、厚生労働省による「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しー2019(令和元)年財政検証結果 ー」というものとそのポイントをまとめたもので、少なくとも5年に一度、見直しが入るというものです。参院選の前に発表すると物議をかもすので、参院選の後に出したとみる向きもあるみたいです。改めてみると、いまいち、何が書いてあるのか解釈の難しい報告書で、私のような普通の人間には簡単には理解して批判できないような形の記述になっています。

これに対して、例えば日経新聞の解釈は「経済成長率が最も高いシナリオでも将来の給付水準(所得代替率)は今より16%下がり、成長率の横ばいが続くケースでは3割弱も低下する。60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と同水準の年金を現在20歳の人がもらうには68歳まで働く必要があるとの試算も示した。」となっていました。これも、報告書の一部を抜粋して解釈したようにも見えます。ちなみに、ここでいう所得代替率とは、公的年金の給付水準を示す指標とされているものです。具体的には、現役男子の平均手取り収入額に対する年金額の比率により表されるとされていて、

所得代替率 =(夫婦2人の基礎年金 + 夫の厚生年金)/ 現役男子の平均手取り収入額 という数式で計算されます。これが2019年度だと61.7%なのですが、基本的には、2004(平成16)年改正法附則第2条において、「次期財政検証までの間に所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、給付水準調整を終了し、給付と費用負担の在り方について検討を行う」こととされています。つまり、今と比較して給付水準が2割減になるまでは、給付と費用負担の検討を行わないわけで、年金は今後も給付水準は減るぞ、と認識しておかなければなりません。

また、この報告書を見ると、2043年から2046年あたりは所得代替率はどのケースでも50%前後となっています。そしてそれを実現するために「保険料の拠出期間の延長」といった制度改正や「受給開始時期の繰下げ選択」が年金の給付水準を確保する上でプラスであることを確認しているわけです。

つまり、この報告書を見る限りは、現行の年金は、今貰っている人の給付水準を将来期待することは無理で、さらに言えば給付時期も先延ばしされる可能性は高いのです。

もう一つ気になるのは被保険者の拡大が検討に入っていることです。最近の報道でも「厚生年金「従業員数」撤廃へ 要件巡り政府検討、パート加入促す」というような記事が新聞でも出ていました。これは年金の基盤を支える意味では重要なことなのかもしれませんが、もしかしたら、給与が低い人を統計に入れることにより、厚生年金の現役男子の平均額(モデル年金の賃金)を下げることになるかもしれません。これをやれれば、所得代替率のかさ上げも実現できるようになる気もします。

まあ、試算の話をあれこれつついてみても、厳しいものが出てくるだけなのです。要するに年金は破たんはしないけれどもあてにはならないということは認識しておいたほうが良いのではないでしょうか。

働けるうちは楽しく働く。100年ライフ.comではこの方向で皆さんと議論できればと考えているわけです。