持ち家を持ってもいいのはどういう時か?そして、現在、持ち家の人はどうしたらいいのか?前回のコラムに引き続き、今回は、持ち家に関する勘違いの二つ目と三つ目のお話をしたいと思います。
持ち家の第二の勘違いは、「持ち家は一生ものである」、という勘違いです。家を住宅ローンを借りて買う人の割合は、勤労世帯では9割程度です。銀行ローンで最長30年、公庫から借り入れると最長35年もの超長期で借り入れることができます。長期のローンであればあるほど、毎月の返済額が軽減されますから、たとえ、総返済額が大きくなったとしても家計を考えれば、多くの人が長期ローンを選択します。しかし、一生の住処としての持ち家を購入しても、ライフステージの変化や仕事が変わったために、せっかく購入した我が家を手放すケースをよく見かけます。いまや、転職は当たり前、離婚や介護問題など、家族の形を変える問題は山積しています。現代社会では、同じ我が家に30年、40年と住まい続けることは益々少なくなってきています。そうなると、持ち家、ましてや借金を背負った形での持ち家人生は、足かせになってしまいかねないのです。
持ち家の第三の勘違いは、「持ち家を持つことが終着点である」という勘違いです。新築マンションの販売でよくあるのが、「いまお支払いのお家賃と同額のローン支払いでマンションが買えます!毎月家賃をどぶに捨てていませんか?」といった類のセールストークです。たしかに、今は住宅ローンの金利も非常に低水準ですから、たとえば毎月10万円の家賃と同額のローンを金利1%、期間30年で借り入れると、3100万円ほどのマンションが買えてしまいます。この価格水準ですと今であれば都内のターミナル駅から30分程度郊外に出た埼玉県や千葉県の駅から徒歩15分内外の3LDK、70平米のマンションがターゲットに入ってきます。これであれば、夫婦と子供二人の家族4人で生活するには十分かもしれません。こうしたマンションをローンで購入する主要層(ボリュームゾーン)は、30代から40代の都心に通勤するサラリーマン層で年収400万円台から700万円台位(住宅金融支援機構の調査データ)です。これらの層の可処分所得(毎月使えるお金)は、年収400万円の人で年間312万円、年収600万円の人で年間458万円位です(所得税、住民税、年金保険等を引いた著者による試算額)。年間450万円程度の手取りですと毎月平均で37万5千円。結構あるように思えるかもしれませんが、年収のうち150万円分がボーナスだとすると、毎月の手取りは28万円ちょっとです。この人が3100万円のマンションを上記の条件でローンを借りて購入したとすると、毎月のローンが10万円、さらに管理費、車を持っていれば駐車場代、年に10万円程度の固定資産税などを払うと毎月手元に残るのは、20万円以下、下手をすると新卒の新入社員よりも手元に残るお金が少ない(!)という笑えない現実に気づかされます。
以上をまとめると持ち家はお金がかかる、ということです。持ち家を借金して買ったため2時間の通勤時間に耐える、ライフステージの変化で転居したいのに我慢して住み続ける、住宅ローンの返済に追われて、欲しいものも買わずに我慢する、等々。こうした昭和や平成の時代の遺物のような生き方は、もう、さよならしてもいいのではないでしょうか?
では、持ち家は本当にダメなのか?次回は、持ち家、賃貸を両にらみしながら、かつ、人生100年時代の資産形成を見据えたマイホーム・ライフについてお話をしていきたいと思います。