人生100年時代に生きるヒント(その9):持ち家はダメか

前回のコラムで、「持ち家か賃貸か」という二者択一の議論があるが「資産を形成する」という意味では、ほとんどの人は「持ち家はダメ」だということをお話ししました。では、持ち家を持ってもいいのはどういう時か?そして、現在、持ち家の人はどうしたらいいのでしょうか?

いま、持ち家を購入する人は、およそ6割の人がローンを借入します。(国土交通省 2017年度住宅市場動向調査を参考)。ローンの無い人が意外に多いと感じるかもしれませんが、これは2次購買者(2回目以降の住宅購入者)や高齢世帯の現金買いが含まれているので、勤労世帯に限ってみれば、ローン購入者の割合は9割程度になります。特に住宅をはじめて購入する層は、憧れのマイホーム取得に夢を膨らませ、一生の買い物として持ち家を購入するわけです。その時、購入者は、
「非常に高い買い物」をするという感覚を持つであろうことは容易に想像できます。

しかし、ここに大きな勘違いが潜んでいるのです。持ち家は、大型家電やクルマとは違います。借金をして自分の夢を実現するために家を購入するという発想ではなく、資産を形成するための投資と考えるならば、持ち家に対するお金の使い方も自ずと変わるはずなのです。

多くの人々は持ち家について以下のような三つの勘違いがあるのではないでしょうか。

第一の勘違いは、持ち家は資産であるとする考え方です。持ち家をローンによって初めて購入した人は、長い人では35年の超長期ローンを利用し、35年間もの間、ローン返済に勤しまなければなりません。とにかく、ひたすらローンを返済していくのはやむを得ないとして、そこには常に負債という強迫観念ばかりで、資産を持っているという意識は持ちづらいのではないかと思います。しかも、持ち家のリアルタイムの市場価値が常にローンの残債を下回っていたとするならば、返済できなくなればすぐに破産となってしまいます。その理由としては、せっかく持ち家として購入した我が家が、負債の額ほどに資産価値を保てないことが挙げられます。実際のところ、首都圏でも郊外の3000万円程度の新築マンションであれば、買った瞬間に市場価値は2割下落し、10年後には2000万円程度になってしまう例は枚挙に暇がありません。もちろん、都心の一等地に立つ人気マンションであれば、市場価値も場合によっては上昇するのかもしれませんが、一般庶民が買える家ともなると資産価値は上がるどころが下がると考えたほうが良いというのが現実のところです。

日本人は諸外国に比べて株式などの投資には消極的でひたすら、超低金利の銀行預金に資産を預ける傾向があると言われていますが、一方でそうした超低金利の安全志向でありながら、一方でひたすら下落し続ける持ち家という資産に資金を集中させていたとするのは、どこかおかしなことでは、ないでしょうか?
持ち家にお金をかけるのは、資産として妥当である場合は第一、そうでなければ、大型家電やクルマのように、あくまでも消費財として「消費にお金をかける」覚悟か、それに耐え得る資金力がある場合に限る、というのが私のご提案です。

次回は、持ち家についての第二、第三の勘違いについてお話ししながら、持ち家論を締めくくりたいと思います。