「年金だけでは2000万円不足する問題」であらためて世間の人たちが思い知ったのが、「年金だけでは生活ができない」という事実、です。現役時代にせっせと生活費を稼いで、さらに2000万円を貯めるというのは、庶民には無理だ!などと逆切れする人の声も聞こえてきそうです。
ここで皆さんの資産について考えてみましょう。資産なんてある訳ない!という人もいるかもしれませんが、実は大多数の日本人は、持ち家という大きな資産を持っていることを忘れてはいないでしょうか?総務省統計局の2018年の家計調査によると全国の世帯主の持ち家率は、全世代平均で78.3%!40代平均で77.2%、50代平均で85.6%となっています。最近は、将来への不安や多様なライフスタイルを選択する人たちが増えたせいで持ち家率も徐々に低下はしているようですが、相対的には、何らかの形で持ち家の人はたくさんいるのです。
企業で財務や経理を担当している人でなくても貸借対照表のバランスシートをご覧になった人は多いと思います。左側に資産、右側に負債を置いて左右でバランスさせる例のあれです。これを皆さんの家計に当てはめてみると、右側にクルマや住宅のローンなどの借金、左側に現金・預金や有価証券、持ち家があれば不動産のような固定資産が計上されます。ここで一般的に借金は良いか?と問われれば、それは良くない、と考えがちですが、持ち家のように自分の資産となるものであれば、時と場合によっては良い借金となることもあるといえるのです。やや、まだるっこしい言い回しですが、「ある条件」をクリアすれば、ということです。持ち家を所有するということは、長年、日本のサラリーマンの憧れであり、長いこと、ひとつのゴールと捉えられてきました。しかし、親からの遺産相続のない、多くのサラリーマンは多額の借金、つまりは住宅ローンを借りて住宅を買っています。前出の総務省統計局の家計調査によると現役夫婦世帯の住宅ローン支払い中の人の割合は39.6%。10世帯に4世帯は住宅ローンという長期負債を背負っているということになります。最近の持ち家にまつわる議論に「持ち家か賃貸か」という二者択一の議論がありますが、資産を形成する、という意味では、ほとんどの人は「持ち家はダメ」という結論になります。なぜならば、資産形成という観点からは、資産形成に投じた資金をどれだけ上回る形で資産が形成されるか、であるからです。
次回は、「持ち家はダメ」という理由を詳しく見ていきながら、では、持ち家を持ってもいいのはどういう時か?いま、持ち家の人はどうしたらいいのか?について考えていきたいと思います。