人生100年時代に生きるヒント(その7):資産寿命という考え方

いま、金融庁金融審議会レポートの「年金だけでは2000万円不足する」問題が、国会やマスコミで毎日のように取り上げられています。けれども、先週のメルマガで山本さんが書かれているように「極めて妥当」であり、私なぞは「何をいまさら!」と思ってしまいます。金融庁レポートで例示されている夫婦で年金収入が209198円、毎月の支出が263718円というモデルそのものが、私に言わせれば、平均よりは恵まれている厚生年金の受給者です。つまり、国民年金に加入するしかない自営業者の夫婦であれば、毎月の年金は40年間全て全額納付済みの場合でも月額65000円弱にしかすぎません。これでは、金融庁レポートのモデルケースの毎月支出額に比べると何と毎月20万円が不足し、95歳まで生きるとすると30年間で20万円×12×30=7200万円!も不足することになるのです。 それを聞いて、「初耳だ!大変!」ともしも、お感じになったとしたら、やはり認識不足だと言わざるを得ません。

「資産寿命」という言葉があります。資産寿命とは、「保有する資産が尽きるまでの期間」のことで、齢を重ねて収入が年金などの限られた収入になったとき、毎月の収支バランスが赤字になれば、いつかはコツコツと貯めた貯えが尽きてゼロになってしまう・・・その時をいいます。そうなると、95歳まで、さらには100歳まで生きるとしたら、前述のように2000万円はおろか、7000万円、場合によっては1億円貯めないといけないことになります。

ここからは、実は平均的なモデルケースで考えても余り意味はなく、個別具体的なケースについて皆さんご自身の場合を算出して考えてみることが必要です。前回のメルマガで人生100年時代におけるお金の使い方を考えるとき、①生きるためのお金、②人生を充実させ、楽しむためのお金、③いざという時のお金、に分けて考えてみることをご提案しました。これは支出の考え方です。支出について考えてみます。65歳の時の支出と85歳の支出の中身は同じでしょうか?65歳であれば旅行やゴルフなど趣味でお小遣いを使うことも必要かもしれません。しかし、85歳になれば、さすがに旅行やゴルフなどで60代の時ほど支出があるとは思えません。つまりは、65歳からの30年といってもその間の生活スタイルが同じであることは、現実的ではないということなのです。

次に、収入の問題です。収入はどこから得るのでしょうか?ひとつはストックとしての資産収入、もうひとつはフローとしての年金収入と労働収入となるでしょう。金融庁の年金2000万円不足問題は、30年間の赤字の積み重ねであり金額が大きくなるのは当たり前のことです。金融庁のモデルケースに従えば、毎月5万円の不足。しかも、65歳時点の支出額と85歳時点の支出額を同額と見ています。ということは、労働収入を毎月5万円ほど70歳過ぎまで得ることが出来れば、相当程度、不足問題は解消できるかもしれないのです。もちろん、前述のように自営業の人は年金だけでは到底足りません。しかし、7000万円以上も貯金が必要かと言えば、それは、そんなことはないと断言できるのです。

なぜ、断言できるのか?それは、支出のあり方を見直し、そして、収入のあり方を見直すことで、その不足額は大幅に変わるからです。だからといって、毎月の支出を見直して、10円、20円単位の節約を実行しよう、と申し上げているわけではありません。私が申し上げたいのは、少しの工夫とやる気さえあれば、より充実した人生後半を送れるのではないでしょうか、ということなのです。

次回の私のメルマガでは、資産寿命に大きく関わるであろう持ち家の活用についてご紹介していきたいと思います。